新入生へのメッセージ

伊藤秀史 (『H&I~大学生活のガイドブック』所収,2009年度新入生歓迎委員会発行,2009年3月1日)

大学生活というと,サークルにバイトに恋愛に旅行に...と,自由に好きなことができる4年間,というイメージでしょうか.でも,何でもすべてできるほどの時間とエネルギーの余裕はありませんよね.どこかで取捨選択が必要になってきます.「好きなことは何でもできる!」といっている先輩たちも,実は勉強の時間がなくなって学期末あげくは卒業後に「もっとふだんから勉強しておけばよかった...」と後悔することも.つまり勉強のための時間が選択されずに捨てられていた,ということになります.

そんなふうに忘れられやすい勉強の時間を確保するためには,勉強せざるを得ない環境を意図的につくることも必要です.たとえば単位の取りやすい(チョンボな)授業ばかり履修せずに,厳しい(シビアな)授業でも興味のわく内容ならばあえて積極的に履修してはどうでしょうか.最近商学部ではカリキュラムが変更され,1年生から毎年少人数のゼミナールを履修することが必修になりました.これを「うざい」と考えてしまったらもったいない.忘れてしまいやすい勉強に学生をコミットメントさせるための仕組みだと考えれば,少しはやる気も出てくるでしょう.

一橋大学は「社会科学の総合大学」と呼ばれます.ということは,大部分の教員は素粒子や免疫やタンパク質の最先端を説明することはできないけど,選択に直面する人間について知りたいことがあれば何かを教えてくれる研究者です.社会科学は選択に直面して決断しなければならない人間の科学なのです.ぜひ大学4年間の間にさまざまな人間を観察し,人間の科学に好奇心をもち,自分の決断にも役立ててください.研究のかたわらでそんなあなたを助けてくれる教員たちも利用してください.